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Hyperledgerブロックチェーングループ最大の支援者の間に出現した緊張関係

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今月頭にHyperledger運営委員会が新しいサプライチェーンプロジェクトを承認した際、それはオープンソースブロックチェーンコンソーシアムとっての重要な出発点となりました。

暫定的にSawtooth Supply Chainと呼ばれているこのプロジェクトは、それがほぼ間違いなくソフトウェアスタックのアプリケーション層に実際に存在する最初のものであるため、新しい境地を開拓しています。それはIntelがHyperledgerに提供したSawtoothのフレームワーク上に構築されています。

これに先立ってHyperledgerは、業界関係者を考慮して、その作業を下位の層に限定し、ブロックチェーンアプリケーションコードの特注を避けていました。その仕事は所有者のやり方で実行されるためにベンダーに委ねられていました――IBMがウォルマート等と協働で行っている、現在稼働中の食品追跡サプライチェーンプラットフォームのように。

それにも関わらず、12月6日、技術運営委員会(TSC)の11名のメンバーの内9名が新しいプロジェクトに賛成しました。ハイレベルなプロジェクトとしてのSawtooth Supply Chainの承認は、その注目度を大幅に高め、Hyperledgerの正式なプロジェクトライフサイクルに入り、それに伴うサポート(コミュニティへの働きかけ、マーケティング、安全レビューなど)を得ることを意味します。

CoinDeskの調べによると、これは、TSCメンバーの内2名がこのプロジェクトはHyperledgerの範囲に属するのかどうか疑問を呈し、反対を表明した中での出来事です。特筆すべきことに、その二名ともがIBMで働いています。Arnaud Le Horsは投票時に欠席しており、TSCの前委員長であるChris Ferrisは、出席したものの投票を棄権しました。

傍観者の立場から見ると、企業向けブロックチェーンの世界では主導権争いが勃発しており、一方はIBMとその贔屓のHyperledger(Fabricとして知られています)、もう一方はIntelが支援するSawtoothです。後者のチームはTSCの新しい委員長でありSawtoothの主任管理者であるIntelのDan Middletonを新しい推進派として擁しています。

アプリケーション層でのスタックの更なる高度なエンジニアリングを行うだけでなく、Sawtooth Supply Chainは、テック企業ではない会社、アメリカの食品大手Cargillがスポンサーとなっている初めてのプロジェクトです。それ自体はまだ確かな名前もないサプライチェーンプロジェクトですが、ゆくゆくはHyperledgerのピアよりも迅速な展開に向けて加速していくことでしょう。Cargillの関与を考えると、将来的にIBMのFood Trustのライバルとなり得ます。

しかし、その緊張関係はガバナンスに関するより大きな問題を暗示するものであるため、
Hyperledgerから生じるサプライチェーンに重点を置いたプラットフォーム間の潜在的な競争よりも、リスクは高くなっています。アプリレベルのプロジェクトにおけるHyperledgerの認可がコンソーシアムの立場を一介の中立的なプレイヤーにまで貶めるものであるとIBMが主張する一方で、他の人々はその提案に対する巨大テック企業の抵抗を、競争を抑えようとする試みであると見なしました。

「これは、オープンソースソフトウェアとは何か、という根本的な議論です」と、Sawtooth 1.0のコードの大部分を書いてこのサプライチェーンプロジェクトに貢献しているBitwiseのCEOであるJames Mitchellは語りました。「そしてHyperledgerのような組織の構造は結局のところ一連の商業的利益にまつわる保護貿易主義なのか、あるいは別の目標を持っているのか?という議論でもあります。」

「賃借料の支払い」

このサプライチェーンプロジェクトにかかる緊張関係のひとつの見方は、IBMの支配する組織としての起源を超えて成長している兆しとすることです。

TSC委員長のMiddletonは、慎重に言葉を選びながら、自身の仕事の一部はHyperledger内における多様性の確保と、ブロックチェーンがその卓越性から得られる強みを維持することだ、とCoinDeskに対して語りました。

彼は、Intelや他の多くの組織がそうであったように、IBMがHyperledgerとオープンソースへの取り組みへの大きな貢献者であることを認めました。

「それらの組織のメンバーが、誰もが透明性を保ってコード開発ができるオープンソース組織を持つことの正当性を損なわないことが重要だと思います。我々はただ貢献者たちの間に良いバランスが広がっていることを確かめたいだけなのです」とMiddletonは述べました。

BitwiseのMitchellはもっと直接的な言い方で、IBMはFabricの早期の拡散によってHyperledger(とコンソーシアムのLinux Foundationとの提携)を、自社のサービスを企業に売り込む方法として利用したと主張し、それを「オープンソースウォッシング」と呼びました。

「オープンソースソリューションをどのように構築しつつあるかを他人に語りたいと思ったとします。しかしアプリケーションコードの大部分が重要とされるところでは、知的財産の所有権を持ち続けたい、そのレベルでソリューションを収益化したいと思っているのです。」と、MitchellはこれまでのIBMのブロックチェーン戦略について述べました、

「人々はこれについてよく知っていると思います。大きな技術プロバイダーに今後20年間もソリューションの賃貸料を払い続けたくないことに、自分たちでも気付いているでしょう。」と彼は付け加えました。

Mitchellは、一度業界がビジネスの取引方法に特定の共通言語を導入すると、ブロックチェーンはこれまでの企業向けソフトウェアの使用許諾よりも強引なロックイン形式を示す可能性があると警告しています。

「Cargillやその他の協働する業界パートナーとの間の対話に基づいて、我々は業界が、ベンダーよりも、それぞれのソリューションを必要としていることを確信しています。」とMitchellは語りました。

それはきっとクローズソース形式を取り、関係者間で所有権が共有されるだろう、と彼は述べました。あるいは、もっといいのは、業界が構築し、貢献し、共有するオープンソースソフトウェアだろうとも付け加えました。

本当か捏造か?

Sawtooth Supply Chain プロジェクトの宣伝のためにHyperledgerの領域を拡大することへの心配を表す中で、IBMのFerrisはそれを個人的な見解でありIBMとは関係のない事だと述べました。

彼はCoinDeskに対して以下のように述べました。

「我々が当初Hyperledgerを設定した際、アプリケーション領域には参入しないだろうと話していました。その理由は、人々に我々が構築しているフレームワークを選んで活用して欲しかったからです。我々はどのような方法でも、サプライチェーンに関係するソリューションを合法的に構築しようとしている誰かと競争状態にあるとは思われたくなかったのです。」

Ferrisは新しいサプライチェーンプロジェクトに組み込まれる構成品は現在のところSawtoothに「非常に限定的なもの」であるとも付け加えました。Hyperledger運営委員会のガイドラインによると、トップレベルのツールプロジェクトもまた、ひとつに過度に集中するよりも複数のサポートを必要としているため、彼の悩みの種となっています。

彼の意見では、Sawtooth Supply Chainはトップレベルのプロジェクトにまで持ち上げられるよりも、Hyperledgerラボに置かれるべきだそうです。これは、ハッカソンからのサンプルコードや研究プロジェクトなど、TSCのインキュベーション承認が早すぎると思われるプロジェクトが置かれる場所です。Labsのプロジェクトがインキュベーションを開始して正式なプロジェクトになりたい場合は、TSCの検討のためにプロジェクト提案が提出される必要があります。

Hyperledger内における更なる多様性の必要に関するMiddletonの指摘について、Ferrisは特に過去一年以上にわたってその問題は取り組まれてきており、幅広い組織からの開発者がコミュニティに加わってきたと述べました。現在IBMは全体的な貢献のおそらく30パーセントを占めていると彼は言いました。

「Fabricでは、我々は全体の40パーセントを占めています。言いたいのは、かつては100パーセントであったということです。この数字は継続して減少しています。はい、IBMはHyperledgerの成功にかなり貢献してきました。しかし同様に、資金において横柄にならないようにも努力しています。」とFerrisは言いました。

著名なエンジニアであり、IBMのブロックチェーンCTOであるGari Singhは、IBMがFabricにどれだけ貢献したか知ることをうれしく思う一方で、他の大きな業界関係者からの貢献がないことをもどかしく思うと述べました。

「オラクルはFabricを実行しています。アマゾンとその新しいマネージドブロックチェーンサービスが実際にFabricのサンプルを取って利用しています。しかしお返しに寄与することはありません。貢献があることはありますが、それらはスタートアップからです――本当は、大きな団体からそれを受け取りたいものです」とSinghは言いました。

信頼できるブルー

スイス・バーゼルで行われた先週のHyperledger Forumのどこかで、コミュニティの重要メンバーのうち数人がIBMへの敬意を表明する機会を得ました。
MonaxのCEOであるCasey Kuhlmanは、Sawtooth Supply ChainプロジェクトがHyperledgerの保護下で行われたという事実は自明の理であると述べました。不安をよそに、IBMは最終的にプロジェクトの邪魔をすることはなかった、と彼は述べました。加えて、彼の意見では、ビッグ・ブルー(IBM)は「コミュニティの極めて理性的なメンバー」として振舞っていたそうです。

「IBMの行動は、私の意見では、かなり分別をわきまえた利己的なものでした」とKuhlmanは言いました。「結局のところ、我々は皆取引相手であり、全員がお金を稼ごうとしているのですから。皆が自分本位です。皆そうあるべきなのです。」

HyperledgerのディレクターであるBrian Behlendorfは、組織内で進化が起こる一方で、未だ焦点は一般に使用されるものに当てられることになるだろうと述べました。

「大量のユースケースのためのコード、テンプレート、レシピやその他の再利用可能なボディに対するCargillのニーズを解決するだけではありません」とBehlendorfは言いました。

4日間にわたる講演とワークショップのために幅広い業界から何百もの企業がバーゼルに押し寄せた、第一回のHyperledger Global Forumについて語りながら、BehlendorfはIBMへ敬意を払うのは当然のこととして、以下のように締めくくりました。

「彼らの為でなければ、我々はここにいなかったことでしょう。」

この記事の翻訳元
Tensions Emerge Between Hyperledger Blockchain Group's Biggest Supporters – CoinDesk

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